今は世の中、ポップスというとシンセサイザーが幅を利かせていますが、私が青春時代(笑)のころは、ビッグバンドやホーンセクションが幅を利かせていました。’70年代から’80年代位の時ですね。
テレビ、ラジオ、そしてレコード(CDはまだない)からはキレのいいブラスサウンドが、たくさん流れていました。
ちょうど私が中学校で吹奏楽部でトランペットを吹いていた頃の事です。
吹いて1年くらいたったころでしょうか。音も安定して出せるようになってきて、合奏にもついていけるようになったころのことです。このころから悩み始めました。
「レコードから聞こえるトランペットの音と自分の出している音が違う…。」
どんな風に違っているように聞こえたかというと、
- ポップスの曲と比べると、音がパリッとしていない。
- クラシックの曲と比べると音につややかさがない。
- そして何より音が小さく細い。
この辺ですごく悩んだ覚えがあります、当時部活の先輩にも相談しましたが、「そう?そんなもんじゃないの?」と言われる始末。
この謎は結局、中高6年やった部活で解けることはなく、音楽の専門学校に行って、初めて解ける事となります。その顛末(てんまつ)をここに書いていきたいと思います。
CDやテレビなどのトランペットの音を信じるな!
音楽の専門学校に行って、ポップスを学ぶようになって、初めてPAというものに触れました。
PAとは、「Public Address」の略で直訳すると、大衆演説になってしまうのですが、音楽の世界でPAというと、マイクとスピーカーを使って音を拡声するセクションを指します。
PAの人の役割は、マイクとスピーカーを使って、音を拡声するのはもちろん、バンドの場合、各パートの音量バランスを取ったりします。
時にはオーケストラでもPAが入る場合があります。テレビの収録の時など、特に各パートが鮮明に聞こえるようにと入ります。
この時に音が”加工”されます。
マイクを通した時点で、音が変わってしまうのはもちろん、PAはミキサーとエフェクターというものを使って、音のバランスを取り、音を加工します。
- ミキサーというのは、数本のマイクを集めて、2本のステレオ音声にする機械。
- エフェクターというのは、エフェクト=音に効果を付ける機械です。
そう、CDやテレビで聞かれる音というのはたいていの場合、エフェクターを通した音の場合が多いのです。
エフェクターは種類がとても多いので書ききれませんが、リバーブ(エコーの様な物)というものをかけただけでも音はがらりと変わります。
なので、作られた音を真似しようとしても当然、できるわけがないのです。
また、特にポップスでされることが多いですが、テレビの現場で”当てぶり”ということをよくやります。
これはあらかじめレコーディングされている音に沿って、演奏者が“演奏するふり”をすること。
これも、レコードの加工された音が出力されているので、真似しようにもできないのです。
もしも、テレビやラジオ、CDの音と違うと悩んでいるのなら、悩むのをすぐにやめてください。違って当然なのですから。
クラシックとポップス、どっちの音を目指す?
クラシックなら、吹奏楽部の通常の練習でいいと思います。あえてアドバイスすれば、積極的に生演奏を聴きに行き、生の音色のイメージを頭に叩き込むことでしょうか。
学校の吹奏楽部の演奏を聴いていると、多く見かけるのが、
「音量が大きくて、音の輪郭がぼやけている音色」
ホール全体にモワモワと響いていて、どこから音が出ているのか分からない状態。
プロの吹奏楽団の演奏を聞くと分かるんですが、あまり音量を出していません、その代わり、音の輪郭は、はっきりしてるんですよね。
音が遠くまで飛んでいる証拠だと思います。
この練習をやるには、屋外で音をなるべく遠くに飛ばすイメージでロングトーンをするのが一番いいのですが、事情があって室内でしか練習できない場合は、室内の一番遠い壁に向かって、音を矢のようにあてるロングトーンがが有効です。
さて、じゃあポップスのトランペットの音色はというと、音量も大きく、音色の明るい音ですね。イメージでいうと「パーン!」と気持ちよくトランペットがなっているイメージ。
この音が欲しくて仕方ありませんでした。自分の音を振り返ってみると、「音色がぼやけてる」そのイメージに尽きました。
そのころはPAで音を作っているなんてことも知らなかったので、やみくもに大きい音で練習していました。
だが、思ったイメージの音にたどり着かず。中高6年間を悶々と過ごすことになります。
音楽の専門学校に行って、初めて、ポップスのトランペットの音色の出し方のヒントを手にすることになりました。
ポップストランペットの音を手にする禁断の練習法
ここからは、私が専門学校時代、トランペットの師匠に教わりながら、自分で試行錯誤して、やっとポップスの音色を手に入れたプロセスを書いていくのですが、あくまで、私の実行した練習法ということで、見てください。
特に吹奏楽の現場では、間違いなく止められる練習方法です。
吹奏楽の現場で、指導者に止められたら、即刻辞めましょう。私はポップスのトランペットの音色を求められたので、この練習をしました。
大音量のロングトーン
いろんな場所で、ポップストランペットの演奏を聞き、自分に足りないと思ったのは、”音量”でした。
根本的に、出している音量が違っていたのです。また、トランペットを鳴らし切れていない、ということも感じていたので、とにかくがむしゃらにやりました。
やっていくうちに、トランペットの倍音が増えてきて、音が明るくなってきたのがわかりました。
これで、ポップストランペットの音の第一段階というのでしょうか、それを手にすることができました。
練習のやり方を書いていくと、
テンポは四分音符=60。
フォルテに行くときは、1拍目で限界一杯(本当にこれ以上吸えないという位)まで息を吸い、これまた限界一杯、小さな音から始め、最後の拍で限界一杯まで、息を出し切る。
8拍できちんと息を出し切るように、息の配分を考えながらやってください。
音量は音が割れる寸前まで音量を出します。自分の肺活量の限界を伸ばす気持ちでやってください。
こちらも、息の使い方は同じ、限界一杯まで吸い、音が割れる寸前からどんどん音を小さくしていく。
最後の拍で息を出し切るつもりでやり、音量もこれ以上小さく吹けないというところまで、小さく吹きます。こちらもフォルテ・ピアノとも限界を広げるつもりでやっていきます。
以下同様に。
強力なアタック
音を出す際に、タンギングで音を出すのですが、これの強力版をやりました。
それまでは「タン、タン、タン、タン」と出していたのですが、これを超強力に「カン!! カン!! カン!! カン!!」とやるようになりました。
楽譜で書くとこんなイメージです。
楽器の音色を決定するのは最初のアタック音です。
最初のアタック音を取り除いた音色を聞くと分かるのですが、途端に何の楽器がなっているの分からなくなります。なので、トランペットの音色を決定するのは、最初のアタック音だと思い
「カン!! カン!! カン!! カン!!」
の練習をやりました。これで、おおむね思った音色が手に入れられました。
ただ、ロックホーンでは「はまる音」なのですが、吹奏楽だと
- 下品
- 使えない
- 他のトランペットと音色が合わない
等、ボロクソに言われますので、ポップスをやらない人はこの練習はやらない方がいいでしょう。
最後に
ポップストランペットの音色をいかにして手に入れるかを書きました。PAに頼るのもアリですが、もともとのトランペットをポップス用に調教するのも、なかなか面白い作業です。
今はネットで情報をたくさん集められるので、ポップストランペットの音色を出すようにするのも、楽になりました。私が専門学校生だったころは、情報がなかったので、とにかく与えられたトランペットをいかにポップス仕様に調教するかが課題でした。
先日、吹奏楽団で、トランペット仲間と楽器を交換して吹いてみたのですが、交換した相手が驚いてました「なんだ、この明るい音は」と。ホルトンのT-101という楽器なのですが。もともと明るい音色なのにさらに明るい音が出るように調教した結果です。
ちなみに私が吹かせてもらった楽器は、ヤマハのXENOだったのですが、オーナーの癖が出ていて、つやのある落ち着いた音色でしたね。
最後にもう一度言いますが、これは禁断の練習法です。吹奏楽の指導者なら10人中10人が「そんな練習やめろ!!」というでしょう。
でも私はポップストランペットの音色が欲しかった。だからやりました。ビッグバンドやロックホーンセクションをやる人には、オススメの方法です。
だまされたと思って試してみてください^^
コメント